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コラム詳細

コラム

蚕の一生 卵から繭、成虫になるまで

絹の糸は、蚕が幼虫の終わりにつくる繭から生まれます。では、その蚕は卵からどのように育ち、繭をつくったあとはどうなるのでしょうか。この記事では、農研機構、大日本蚕糸会、群馬県、群馬県立日本絹の里の資料をもとに、蚕の一生を順にたどります。

卵から繭をつくるまで

人が世話をして育てる虫

農研機構のページによると、蚕はクワコという野生のガを人が飼いならし、数千年をかけて家畜にしたものです。よい生糸をたくさん、効率よくとるために、品種の改良も重ねられてきました。幼虫はほとんど動き回らず、成虫は羽があっても飛ぶことができないため、人の世話がなければ生きていけないと説明されています。大日本蚕糸会の資料「カイコからのおくりもの」によると、カイコはカイコガの幼虫の呼び名で、約1か月半という短い一生のうちに、卵、幼虫、サナギ、成虫と姿を変える完全変態の昆虫です。チョウと違うのは、自分で繭をつくり、その中でサナギになる点だと資料は説明しています。幼虫の足は、胸に6本、腹に8本、お尻に2本あり、サナギになると胸の6本だけが残ります。

卵とふ化

群馬県蚕糸技術センターのページによれば、1匹の蛾が産む卵の数は品種や個体によって違い、およそ250粒から500粒です。同じページには、冷蔵庫から出した卵は、25度に保てば約11日でかえると書かれています。大日本蚕糸会の資料では、卵の大きさは約1㎜で、黒から青みがかった灰色に変わると2、3日でふ化するとされています。生まれたばかりの蚕は体長2、3mmで、黒い体が毛におおわれていることから「毛蚕(けご)」と呼ばれ、黒くてアリのように見えることから「蟻蚕(ぎさん)」とも呼ばれます。

4回の脱皮と5つの齢

体が大きくなるには皮を脱ぎ替える必要があり、幼虫は脱皮を4回くり返しながら育ちます。脱皮の前には何も食べずにじっと動かなくなり、眠っているように見えることから、この状態を「眠(みん)」と呼びます。脱皮のときは、先に胸と腹の皮を脱ぎ、そのあとで頭の皮を脱ぎます。脱皮ごとに1齢から5齢へと段階が進み、資料の目安では、1齢と2齢がそれぞれ約3日、3齢が約4日、4齢が約6日、5齢が約8日です。資料によると、蚕が一生のうちに食べるえさの約9割は5齢の時期に食べるといわれます。4齢になると体がぐっと長くなり、眼状紋(がんじょうもん)と呼ばれる模様もはっきりしてきます。農研機構のページによると、幼虫は桑の葉を盛んに食べ、25日ほどのあいだに体重が1万倍にまで増えます。日本絹の里の解説では、1齢から3齢までの幼い蚕を「稚蚕」と呼び、病気にかかりやすいため、消毒が行き届いた共同の稚蚕飼育所で育てられてから農家へ配られるとされています。

熟蚕になり、糸を吐いて繭をつくる

5齢の終わりが近づくと、蚕は桑を食べなくなり、体が少し縮んで黄色く透き通ったようになります。この状態の蚕を「熟蚕(じゅくさん)」といい、日本絹の里の解説では「ズウ」という呼び名も紹介されています。熟蚕は、繭をつくるための道具である蔟(まぶし)に移されます。日本絹の里の解説によると、糸を吐く速さは1秒に0.5cmから1cmで、約2昼夜をかけて1,300mから1,500mにもなる繭糸を吐き、繭を仕上げます。

繭の中で蛹になり、成虫へ

繭の中での変化

繭をつくり終えた蚕は、繭の中でもう一度脱皮してサナギになり、このことを蛹化(ようか)といいます。大日本蚕糸会の資料では、サナギになると雌と雄を見分けられるようになり、ふっくらして大きいほうが雌、細くて小さいほうが雄だと、おおまかな見分け方が紹介されています。同じ資料によると、サナギになって10日くらいで殻を破ってカイコガが羽化し、口から酵素を出して繭を溶かして外へ出てきます。羽化は、雄のほうが早いとされています。

成虫の短い一生と、次の世代

農研機構によると、出荷される繭は乾燥されて生糸に加工されますが、繁殖に使う蚕の繭は乾かさずに保管され、2週間ほどで羽化します。羽化した成虫はまもなく交尾をして、500個ほどの卵を産みます。成虫は何も食べず、ほとんど動かないまま、1週間ほどで短い一生を終えるとされています。大日本蚕糸会の資料は、雌がお尻にあるフェロモン腺からにおいを出して雄を呼び、雄は触角でそのにおいを感じとって雌を探すと説明しています。

たくさんの品種と、家で飼う蚕

蚕には、糸の量が多い大きな繭をつくるもの、黄色い繭をつくるもの、細い糸がとれる繭をつくるもの、病気に強いものなど、性質の違うものがいると農研機構は紹介しています。農研機構のページによると、養蚕農家の蚕に、研究所や大学で保存されている蚕も加えると、日本の蚕は約1,900種類にのぼります。このうち約600種類は、農研機構が遺伝資源として受け継いでいるものです。日本絹の里の解説では、家で飼われる蚕は家蚕(かさん)と呼ばれ、野や森にすむ繭をつくる仲間は野蚕(やさん)と呼ばれて、日本のテンサンなどがいると紹介されています。群馬県蚕糸技術センターは、県内に住む人に蚕の卵を有償で分けており、蚕は人に危害を加えず、桑の葉が無い時期でも人工飼料で育てられる教材向きの昆虫だと紹介しています。

まとめ

蚕は、卵からかえって4回の脱皮をしながら5齢まで育ち、熟蚕になると糸を吐いて繭をつくります。繭の中でサナギになり、やがて成虫になって卵を産み、成虫は何も食べずに短い一生を終えます。絹の着物の一枚一枚の糸の向こうに、人が世話をしてつないできたこの一生があると知ると、絹という素材が身近に感じられます。

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参考にした資料

各ページの内容は、2026年10月13日に確かめたものです。