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コラム詳細

コラム

群馬県が育てたオリジナルの蚕の品種

蚕にも、稲や野菜と同じように品種があります。群馬県は、県の蚕糸技術センターで独自の品種を育て、県産の繭や生糸の特色づくりに生かしてきました。この記事では、群馬県のページと群馬県立世界遺産センターの紀要をもとに、蚕の品種のしくみと、群馬県のオリジナル蚕品種の特徴を紹介します。

蚕の品種と群馬県の取り組み

農家の蚕が交雑種である理由

群馬県のページによると、養蚕農家で飼われている蚕は、ふつう日本原産の日本種と中国原産の中国種をかけ合わせた「交雑種」です。交雑によって病気に強くなり、よりよい繭をつくるようになると説明されています。二つの品種や系統を一度かけ合わせたものを一代交雑種、三つの原種を使うものを三元交雑種、四つを使うものを四元交雑種と呼びます。1年に世代を1回くり返すものは1化性、2回くり返すものは2化性と呼ばれます。

国が品種を指定していた時代

群馬県蚕糸技術センターの「育成した蚕品種」のページによると、糸をとる繭のための蚕種はすべて交雑種で、かつては国が優良と認めた品種だけが製造を許されていました。国が指定した品種以外の蚕を飼うことや、その繭を売ることは禁じられていましたが、この規制は平成10年になくなりました。その時代に群馬県が育て、国の指定を受けた品種の名前には、県の山や川にちなんだものが多く見られます。たとえば昭和35年の「みやま×ひかる」は上毛三山に、昭和53年の「利・根×秀・水」は利根川にちなんだ名前です。平成6年3月に春用として指定された「ぐんま×200」は、群馬県の人口が200万人に達したことを記念した名前で、平成8年3月には夏秋用にも用途が広げられました。

「ぐんまシルク」と群馬県の養蚕

群馬県のページによると、県は、県の蚕糸技術センターで生まれたオリジナル品種の繭からつくる「ぐんまシルク」の生産に力を入れています。同じページ(2020年6月の更新)によると、群馬県の繭の生産量は全国の4割、生糸の生産量は6割にあたるとされています。群馬県立世界遺産センターの紀要(2022年3月)に載った報告では、群馬県の繭の生産量は、1954年(昭和29年)以来ずっと全国1位だとされています。県は、オリジナル蚕品種を使った生糸や絹製品を「ぐんまシルク」として認定し、認証マークを発行して産地を示す取り組みも行っています。

9つのオリジナル蚕品種の特徴

県のページに挙がっているオリジナル蚕品種は、「世紀二一」「ぐんま200」「新小石丸」「ぐんま黄金」「新青白」「蚕太」「上州絹星」「ぐんま細」「なつこ」の9品種です。糸の太さや色、ほぐれやすさ、染まりやすさなどにそれぞれ特徴があり、高級呉服から洋服、ニット製品まで幅広く使われていると紹介されています。それぞれの特徴を、県の「群馬オリジナル蚕品種」のページから拾うと次のとおりです。

  • 世紀二一:13年をかけて育成された日中四元交雑種で、繭糸の太さは約2.4デニールと普通の品種の約3デニールより細く、繭糸の長さは約1,500メートルと普通の品種の約1,300メートルより長い品種です。
  • ぐんま200:平成5年に育成された日中一代交雑種で、群馬の気候風土に合い、節が少なくとても白い生糸がとれるため、和装にも洋装にも使われています。
  • 新小石丸:皇居の御養蚕所でも飼われている日本種「小石丸」に県が育てた中国種を交配した品種で、むらの少ない生糸がとれ、高級呉服に好まれています。
  • ぐんま黄金:黄色い繭の中国種とかけ合わせた品種で、つやのある黄色の生糸がとれます。
  • 新青白:文政年間に今の藤岡市で育てられたと伝わる日本種「青白」をもとにした品種で、つやのある薄緑色の生糸がとれます。
  • 蚕太:繭はやや小ぶりですが、繭糸が4デニール以上と太く、ニットの素材として関心を集めています。
  • 上州絹星:在来種の「又昔」をもとにした品種で、強さと伸びに優れ、摩擦やしわに強く、染まりやすい生糸がとれます。
  • ぐんま細:細い生糸を求める声に応えて育てられ、繭糸の太さが約2.2デニールと細く長いうえ、白さにも優れています。
  • なつこ:夏の暑さに強い品種で、猛暑日が続く初秋の飼育でもこれまでの品種より多く繭がとれるよう工夫されています。

「育成した蚕品種」のページでは、国の規制がなくなったあとの品種の命名の年も紹介されていて、新小石丸は平成10年2月、ぐんま細は平成25年9月、なつこは令和2年1月に名前が付けられています。なつこという名前には、近年の暑さに負けないように、また親しみをもって迎えてほしいという思いが込められています。

家庭や学校で飼える品種

群馬県のページは、蚕の飼育に慣れていない人には、飼いやすい「ぐんま200」をすすめています。群馬県蚕糸技術センターは県内に住む人に蚕の卵を有償で分けていて、配る品種として「ぐんま200」「新小石丸」「ぐんま黄金」「ぐんま細」「なつこ」を挙げています。県内の教育機関などの場合、卵の料金はかからないとされています。

まとめ

群馬県は、日本種と中国種をかけ合わせる交雑の技術を生かして、糸の細さや長さ、色、暑さへの強さなどに特徴を持つ9つのオリジナル蚕品種を育ててきました。その繭からつくる生糸と絹製品は「ぐんまシルク」として認定され、全国の繭と生糸の多くを生み出す県の養蚕を支えています。絹の着物の糸ひとつにも、こうした品種づくりの積み重ねがあることを覚えておくと、素材の話がより楽しく読めます。

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参考にした資料

各ページの内容は、2026年10月13日に確かめたものです。